院長コラム
「子どもとメディア」について
2004年2月、日本小児科医会は電子映像メディアへの乳幼児早期からの長時間接触がもたらす子どもたちへの負の影響を見過ごすことはできないと考え、「子どもとメディア」の問題に対する提言を行いました。そしてポスター啓発などの啓発活動を行ってきました。
- 2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
- 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
- すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます。テレビゲームは、1日30分までを目安と考えます。
- 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かないようにしましょう。
- 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。
社団法人 日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会
しかし、子どもたちのメディア接触にあまりブレーキはかからず、低年齢化、長時間化は継続または進行しているのではないでしょうか。
0歳、1歳という乳幼児期からテレビ・ビデオを見せられ、幼児期にすでにゲームデビュー、小学生・中学生になるとテレビゲームや携帯型ゲーム機、ケータイ、そしてパソコンに長時間接する日本の子どもたち・・・。
その結果睡眠や食事などの生活リズムは大きく乱れ、家族の会話・関わりも減少し、体を動かすことも減少します。子どもたちの体や心、そして言葉の力・コミュニケーション能力の発達は危機的状態となっています。
乳幼児の間で最近、人とうまく関われない子どもが目立っています。そういう子どもの特徴として、以下のようなことが指摘されています。
- 表情がない
- 言葉が遅い
- 呼んでも振り向かない
- 視線が合わない
- テレビ・ビデオを消すといやがる
- いっときもじっとしていない
- いきなり奇声を発する
その原因のひとつとして考えられるのが、乳幼児早期からのテレビ・ビデオ視聴です。
もし、子どもに上記のような特徴が見られ心配している場合は、まずテレビ・ビデオを消してみましょう!今まで子守りをさせていたテレビやビデオを止めて、両親がお子さんと生身の関わりをすることでかなり改善します。
赤ちゃんにとってもっとも大切なものは親子のふれあいです!
おっぱい・ミルクを飲ませてもらう、オムツを替えてもらう、抱っこしてもらう・・・一日に何度も、赤ちゃんの要求にお母さんが応えます。時にはお父さんも応えます。赤ちゃんはそういったやりとりの中で愛されていることを感じ、“人を信じていいんだ”という心が生まれます。そして、赤ちゃんとお母さん(世話をしてくれる人)の間には、強い心の絆が育まれていきます。
人を信じる心、親子の絆は、子どもの発達の基礎です。赤ちゃんには親子のふれあいがとても大切なのです。
テレビやビデオの視聴はそんな親子のふれあいを減らしてしまいます。
お母さん・お父さんがテレビやケータイ、パソコンを見ていたら赤ちゃんからのサインに気づかないかもしれない・・・。サインに気づいてもらえない赤ちゃんは、そのうちあきらめてサインを出さなくなり静かな赤ちゃんになってしまいます。赤ちゃんは動くもの、光るもの、音の出るものなどに関心を寄せますので、テレビにも関心を向けます。赤ちゃんがじっとテレビを見ている間、お母さん・お父さんとの関わりはなくなってしまいます。
そして赤ちゃんの成長にもう一つ欠かせないものが遊びです!
五感を使う、体を動かすことが赤ちゃんの遊びです。人とかかわることが赤ちゃんの遊びです。遊びの中で赤ちゃんの「できる」はどんどん育っていきます。指先や 手、腕、足の動きだけでなく、未知の感触を確かめたり、色や音を覚えていったりと感覚や情緒の面も同時にどんどん豊かになっていきます。テレビ・ビデオの視聴はそんな赤ちゃんの遊びも減らしてしまうでしょう。
赤ちゃんだけでなく、大きいお子さんも外で遊んでさまざまな体験をすることと親子のコミュニケーションが大事です。テレビやビデオの映像を見るのではなく、実際の体験のひとつひとつが子どもたちを育てていくのです。
悪いのは「メディア漬け」であり、メディア全体が悪いのではありません。メディアの発達により私たちの生活はより便利に豊かになっていることも確かです。
子どもたちが今後も増え続けるメディアと上手に付き合い利用していけるように、教えていくことが必要です。そのためにも、2歳以下の子どもにテレビ・ビデオの視聴は必要ありません。ゲームデビューはできれば10歳以降(現実と仮想の違いをしっかり理解できてから)。ケータイは善悪の判断がしっかりできるようになってから(大人になるまで無理、という意見もあります)。子どもにゲーム、ケータイを持たせる時は、その前に親子で話し合い、ルールを決めてから。
親もメディア漬けにならないように。休日には家族で外遊びを!
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