症状一覧

2012年01月01日症状一覧

同時接種のすすめ

この数年で、乳児が受けられる予防接種の数が増加し、予防接種を受けにいったりスケジュールをたてたりするのがとても大変になってきました。
そこでクローズアップされたのが同時接種です。
日本でもようやく同時接種が浸透しはじめました。
しかし昨年、<ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン 同時接種により乳児が死亡>というセンセーショナルな報道がなされ、ヒブ・肺炎球菌の接種は一時中断、接種を予定されていた方たちが混乱におちいったのはみなさんのご記憶にも新しいと思います。
その後、厚労省はじめ専門機関より、<子どもの死亡と同時接種に関連性はない>との見解が出され、再開されましたが、不安に思われているお父さんお母さんが多いのではないでしょうか。

何本も一緒にうって、きちんと抗体がつきますか?免疫力が弱いのに負担ではないですか?

子どもの免疫の力は弱いので、免疫に負担がかかるのでは、と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、それでも、自然界のさまざまな病原体に対して対応する能力はもっています。
たとえワクチン10本を同時接種しても、免疫力の0.1%くらいしか使用しません。いわば、<海の中に塩を振りいれたようなもの>です。しっかり抗体はつくのです。

いっぱい痛い思いをして、小さい赤ちゃんがショックをうけたりしないですか?

赤ちゃんが痛くてショックを受けてしまっている様子はありません。
針が刺さったときはもちろん泣きますが、4本接種しても、終了後はすぐに泣き止んでいます。

同時接種をすることで、大きな副反応につながったりしませんか?
危険ではありませんか?安全なのでしょうか?

世界中のあらゆる人種や民族の子どもたちに対して10年以上前から同時接種が行われていますが、なにも問題は起こっていませんし、同時接種によりワクチンの効果が減ることもありません。

副反応が出やすくなったり、同時接種による特別な副反応が出ないことは、世界中のいろいろな研究で検証されています。

色々な考え方がございますが、私は基本的に同時接種は安全で、どんどん取り入れていくべきと考えています。

<ワクチンの副反応>といわれているものが、すべてワクチンによるものとは限りません。

ワクチン後に重大な症状や病気がおこることを、<有害事象>と呼びます。
<有害事象>には、ワクチンによるものとワクチンとは無関係のもの(ワクチンとは無関係なことがたまたまおこった)があり、医学的には有害事象のほとんどがワクチンとは無関係のものとわかっています。
たとえば、ワクチンをうけたあとに発熱した、などという場合、ワクチンとは関係なく、すでにひいていたカゼなどが原因である場合もあるわけです。昨年3月に同時接種がいったん中止になり、その後予防接種との関連性がないと判断されたのも、 そのような事情によります。
現在日本で接種されているワクチンは、副反応は非常にまれですが、(多いものでも100万人に1~2人程度)ゼロと言い切ることはできません。
副反応をゼロにするには・・・極端な話ですが、接種しなければ副反応はおこりません。しかし、それでは、ワクチンで防げる病気にかかってしまうという大きなリスクを背負ってしまうことになりますね。
副反応は心配ですが、副反応のリスクと接種で防げる病気のリスクをしっかりと見据えて考えることが大切だと思います。

同時接種のメリット

必要な予防接種をもっとも適切な時期に受けることができます。
参考:「VPDを知って、子どもを守ろう。」の会 おすすめ 予防接種スケジュール(PDF)

★小児科医院に足を運ぶ回数がすくなくなるため、小児科医院でカゼをもらってきてしまうことなども減ります。

★定期接種と同時接種すれば、万が一のときによりしっかりした補償がうけられます。

万が一同時接種で副反応がおこった場合、どのワクチンの副反応かわかりません。
しかし、国が定めた健康被害救済制度による補償は受けられます。
定期接種は任意接種より補償が手厚くなっています。
定期接種と任意接種を同時接種して副反応がおきた場合、原則として定期接種の補償が適応されます。このように、補償の面から考えても、定期接種と任意接種のワクチンを同時にうけることは万が一の場合の安心にもつながります。
万が一のことは考えたくないものですね。しかし、そういうことが起きた場合、より多くの補償が受けられるようにしておくのが、<保険>というものの考え方だと思います。

現在、接種するワクチン数の増加により、ワクチン外来はどこのクリニックでも大変混雑しています。同時接種することにより、小児科医院のワクチン外来の混雑が緩和され、より多くの子どもたちが適切な時期に接種が受けられるようになります。

肺炎球菌やヒブの髄膜炎にかかってしまうと、本当に大変です。
お父さんお母さん、患者さんを診る医師、みんな、必死の思いで子どもを死の淵から救おうと奮闘します。しかし、みんなの願いもかなわず、命を落としてしまう子供たちもあるのです。
このような病気から子どもを守る手立てがあるのに、ワクチンを受ける機会を逸したり、時期を逃したりしている子どもたちがいることは本当に残念なことです。
すべての子供たちを、ワクチンで防げる病気から守るために、私たち小児科医は日々力を尽くしています。同時接種もその1手段です。

予防接種のメリット・デメリットを理解し、
もっとも適切な時期に接種できるように
お子様のスケジュールをたてましょう。
生後2か月がワクチンデビュー! 赤ちゃんが生まれたら、かかりつけの小児科をきめて
早めに相談してください。
同時接種が不可能なワクチンは、ほとんどありません。
困ったり不安に思ったときは、かかりつけの小児科医に何でもきいてくださいね。