症状一覧

2010年05月01日症状一覧

風邪と中耳炎

咳や鼻水で小児科に行って、耳を診てもらったこと、ありませんか?風邪から中耳炎になることは小さい子に多くみられます。私は、小さい子で鼻水が出ていて、熱があるときには、鼓膜は必ず観察しようと考えています。(耳垢があって鼓膜が見えないときも多いのですけれど、ね)
今回は小児科医からみた中耳炎についてお話します。

 

中耳炎とは、耳の穴の奥にある鼓膜の炎症と、その内側の中耳腔の炎症のことをいいます。

中耳腔は耳管という管で鼻の奥につながっています。ですから、風邪をひいて、鼻がぐずぐずしてくると、鼻から中耳腔に細菌があがっていって、中耳炎を起こすのです。こどもは、耳管が短く、細菌が耳まで届きやすいので、風邪から中耳炎を引き起こしやすいです。

特に乳児では、生後6ヶ月ころから、
おなかの中でお母さんからもらった抗体が無くなって免疫力が弱くなるため中耳炎の発症が増えてきます。中耳炎が起こると、鼓膜が赤くなり、内側に膿が溜まってきます。内部に膿が溜まると耳の痛みがかなり強くなるようです。

 

小さい子は耳が痛いとは言えません。

耳を触る、機嫌が悪い、などの症状から推測するしかないので、なかなか分かりにくいです。耳漏(みみだれ)が出てくることもあります。これは、膿がたまりすぎて鼓膜がやぶれ、膿が流れ出してくる状態です。こうなると、鼓膜の内側の圧力は下がりますから、痛みは少し楽になるようですが、治ったわけではありません。

 

中耳炎の治療としては、抗生物質の投与、鼓膜切開をして膿を出す、などがあります。

最近は抗生物質の効きが悪い菌が多く、内服による治療は限界があり、治りが悪い場合には鼓膜を切って膿を出さなければなりません。
鼓膜は切開してもすぐふさがってしまうことがあり、膿がたまらなくなるまで何回か切開することもあるようです。鼓膜を切って、耳が聞こえなくならないのですか、ときかれたことがありますが、鼓膜は切ってもまたふさがりますし、鼓膜切開によって聴力がおちることはありません。
抗生物質の投与は小児科でもできますが、鼓膜を切開した方が良いかどうかの判断は耳鼻科の先生にしてもらった方が良いと思うので、私は中耳炎を疑ったら、必ず耳鼻科受診を勧めています。

 

中耳炎にならないようにするには、どうしたら良いか。

これはとても難しい問題です。風邪をひかせないようにするのが一番でしょうが、乳児期から集団生活をしている保育園児などにとっては無理な注文です。中耳炎になりやすい児には早めに抗生物質を、という考えもありますが、耐性菌が非常に増えている現在、効果的な手とは言えませんし、耐性菌のますますの増加にもつながるので、あまりやりたくありません。

予防としてできること

  1. 鼻汁が出てきたら、よくかませて、鼻汁を鼻腔の中にためないようにする(乳児でまだかめないときには吸ってあげる)ことはとても大切です。鼻腔を空にして、鼻の奥で菌が繁殖するのが防げれば、耳管を通して中耳へ菌が上がっていくチャンスも減るでしょう。
  2. 当院では、鼻腔の中を洗うための点鼻薬を鼻水が出たり詰まったりしている子に渡しています。これを使うと、鼻汁が詰まって吸っても出てこないような場合にも、鼻汁を取り除くことができるようです。
  3. ミルクを飲んでいる子の場合、寝かせた姿勢でミルクを飲ませると鼻腔までミルクが逆流して、中耳炎の原因となることもあるようです。ミルクは抱っこして飲ませてあげましょう。

中耳炎になったら、しっかり治るまで、耳鼻科の先生に診てもらいましょう。治りきらずに放置すると、中耳に滲出液がたまる滲出性中耳炎になり、聴力が低下して、言葉の発達に影響が出てくようなこともあります。

以前に、朝からひたすら泣きやまない子がやってきたことがありました。熱が高いだけでなく、とにかく機嫌が悪いのです。ひたすら泣きわめき、お母さんも抱っこしていられないくらいでした。耳をのぞくと、鼓膜は赤く腫れ上がり、中には膿も貯まっているようにみえました。すぐ耳鼻科に行ってもらいました。鼓膜を切開し、大量の膿が出たそうです。その後、機嫌はさほど悪くはなくなり、熱も一日ほどで下がりました。

お子さんが不機嫌なときは、中耳炎も疑ってみましょうね。