症状一覧

2010年05月01日症状一覧

胃腸炎

毎年、冬になると、<吐いて下痢をするかぜ>が流行します。
これは、ウイルス性の胃腸炎であることが多く、感染力が強いです。ロタウイルス、ノロウイルスが有名ですが、他にもアデノウイルス、サポウイルスなどによるものも多いです。

 

胃腸炎の症状

これらの胃腸炎は、まず吐き気から始まることが多いです。夜中に寝ていて、いきなり起き上がって吐いて、お布団が大変なことになった、というお話はよくききます。それほど、いきなり吐き気がくることもあるようです。吐き気ははじめの12時間くらいは強く、30分から1時間おきに吐き続けることもあります。
下痢は水様で頻回なものから、少し便がゆるくなるくらいのものまでいろいろです。便が白っぽっくなることもあります。
便に血が混じったり、血性の粘液便がでているような場合は、ウイルス性より細菌性の腸炎を疑ったほうがよいでしょう。

下痢でも嘔吐でも水分と塩分がどんどん失われていきますから、ひどい場合、半日くらいで脱水状態 に陥りぐったりしてしまうこともあります。脱水の症状としては、尿の量が減る、唇や口の中が乾く、手足が冷たくなる、皮膚の張りが悪くなりしわしわになる、目が落ちくぼむ、等があります。皮膚の張りが悪くなったり目が落ちくぼんだりしたら重症です。この状態が長く続くと、脱水から来るショック状態になることもあるのです。

 

胃腸炎の治療 1.水分補給

胃腸炎の治療のはじめはとにかく水分補給です。
吐いたり下痢をしたりしたら、それを上回る量の水分と塩分を取らせなければなりません。水分と塩分が取れなければ、点滴して血管から直接入れなければならないときもあります。
最近、経口補水療法が注目されています。
水分塩分糖分をバランスよく配合した経口補水液を口から飲むことで、点滴などの痛い治療をうけなくてもよくする治療法です。
吐き気が少しおさまってきたこころから、ほんの少しずつ頻繁に(10kgの子なら1回10mlを5分に1回、というように)水分を摂取させます。経口補水液は<OS1>とか<ORS>などという商品が出ています。
自宅でも、水1リットルにつき、砂糖40g食塩3gをくわえて作ることができます。

 

胃腸炎の治療 2. 食事療法

食事療法も、胃腸炎では大切です。
胃腸炎の初期は、食事をとれないことが多いですが、これは仕方がないことです。胃も腸も、働きが悪いですから、無理に食べても消化できず、気持ちが悪くなってしまったりします。
本人に食べる気が出てきたら、お粥やおうどんなど、塩分で味を付けた炭水化物中心の消化の良いものを少しずつ、食べさせてみてください。
ミルク類は消化が良いように思えますが、胃の中では固まって、固形物と同じ状態になります。下痢が長引くこともありますから、しばらくは中止したほうが良いでしょう。
食欲が出てきても、消化の悪いものを食べたり、食べ過ぎたりすると、症状がぶり返すことがあります。数日は、食事に気をつけておきましょう。

 

胃腸炎の治療 3.薬物療法

薬としては、吐き気止め、下痢止め、整腸剤などが使われます。吐き気が非常に強いときには座薬を使うとよいでしょう。下痢止めは腸の動きを抑えるタイプのものがあるので、便の回数が減ってきたら、整腸剤だけに切り替えてもよいかもしれません。

下痢が長引くとき
胃腸炎は普通4~5日で症状がおさまります。
しかし、乳児の場合、その後何日も下痢が続く、ということが珍しくありません。腸の粘膜が一度傷んでしまうとなかなか回復しないこともあるのです。便が酸っぱいにおいがするようなときは、胃腸炎後の乳糖不耐症という状態を疑います。その場合、ミルクを乳糖が入っていないものに切り替えるか、乳糖分解酵素を内服する必要があることがあります。
胃腸炎以外の原因(腸管アレルギーなど)でも、下痢が長引くときがあります。特に乳児の場合は必ず受診をしてください。

私も以前脱水でぐったりしたお子さんを診たことがありますが、胃腸炎が始まってからまだ24時間経っていないのに、全身蒼白でぐったりと動かず、点滴の針を刺しても泣く元気もありませんでした。点滴がない時代だったら、脱水で命を落とすこともあり得るのだな、と実感しました。
子どもは身体の中に占める水分の量が多く、脱水も簡単におこしてしまいます。水分がとれないときは早めに受診を!!ね。