症状一覧
インフルエンザ
インフルエンザの流行期になりました。診療所も、発熱のお子さんでごった返す季節です。毎年のことですが、インフルエンザが流行ってきたという報道があると、心配になってしまいますね。
★インフルエンザの流行
インフルエンザウイルスはABCの3つの型がありますが、流行するのはABの2種類です。
年によって、流行のパターンは違いますが、一般的には11月末ころから患者が出始め、年末~年明け頃から急増、1月2月にピークとなり、その後3月頃より減少していくというパターンをとります。
★インフルエンザの症状
インフルエンザウイルスが感染してから1~3日後に高熱、体の痛み、だるさ、頭痛等の症状が出てきます。咳、鼻水等の症状は少し遅れて出ます。咳は長く残ることが多いです。
高熱は長いと3~7日続き、途中0.5~1日熱が下がってまた発熱する<2峰性発熱>を示すこともあります。
通常は一週間前後で治癒しますが、中には重症の合併症をおこすことがあります。合併症としては、肺炎、クループ等の呼吸器疾患が多いですが、筋炎、心筋炎、神経合併症などが見られることがあります。熱性けいれんの合併も他のカゼにくらべて多く見られます。
1番心配なのは、脳炎、脳症等の神経合併症です。乳幼児に多く、毎年50~200人程の発症があり、死亡率は10~30%です。発熱、意識障害、けいれん、異常行動などの症状がみられます。どのような子が脳症を発症しやすいか、どんな場合に脳症になるのかは、はっきりはわかっていません。 ポンタール、ボルタレンなどの解熱剤の使用が、脳症を重症化させるというデータがあります。
脳炎脳症まではいきませんが、うわごとをいう、突然暴れだす、などの異常行動が見られることがあります。
★インフルエンザの診断
鼻の奥の粘膜や鼻水で検査すると、数分でインフルエンザの診断がつきます。しかし、この検査は100%インフルエンザを診断出来るものではありません。特に、発熱した直後(12時間以内)に検査をすると、実際にはインフルエンザでも陰性という結果がでてしまうことが多いのです。医師は、患者さんの症状や診察所見、周囲の流行状況、などを合わせて、インフルエンザを診断します。受診のタイミ ングや家族の状況などによっては検査せずに診断する場合もあります。
★インフルエンザの予防
マスク、手洗い、うがい、等は生活習慣としては大切です。マスクの布はウイルスの粒子の侵入を防ぐことはできませんが、人の咳、鼻水の飛沫を防ぐことはできます。不織布のマスクの方が有効です。また、手などについた鼻水などからも感染するので、こまめに手洗いをするとよいです。
ウイルスは乾燥した環境で増殖しますから、部屋の加湿、換気をこころがけましょう。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防することができるといわれています。(有効率70~80%)
小児にどのくらいの効果があるか、はっきりした統計はでていませんが、成人より効果が劣ります。乳児では有効率は30%程度にとどまるようです。しかし、 小児の脳炎、脳症は、有効な予防法がないので、少しでもインフルエンザに罹る可能性を減らすために接種を受けるのは意味があることと思います。
卵アレルギーのある人には接種できないのでは、という質問が多いですが、鶏卵成分はごく微量で、ほとんど問題はありません。接種について不安のある方は、どんどん相談にいらして下さい。
接種後抗体が上がり始めるまでに10日、最大値に上がるまでには2回目接種後1ヶ月はかかるということですので、流行前の11月、12月中に接種を終わらせることが大切です。
★インフルエンザの治療
インフルエンザの治療薬には、抗ウイルス薬として、タミフル(内服薬)、リレンザ、イナビル(吸入薬)、ラピアクタ(注射剤)という薬があります。タミフルは、服用後の異常行動が問題になり、因果関係は明らかではないものの、10代の子どもへの投与は避けることになっています。
抗ウイルス薬は、インフルエンザ発症後48時間以内に服用(吸入)すると、発熱期間をおよそ24時間短縮する効果があるといわれています。
麻黄湯、葛根湯などの漢方薬も治療に使われます。麻黄湯にはタミフルに匹敵する解熱効果や抗ウイルス作用があるとする報告もあります。
インフルエンザに罹ったから、必ず抗インフルエンザウイルス薬を飲まなければいけない、ということはありません。抗ウイルス薬をのんだからといって、イン フルエンザがすぐに治るわけではありません。発熱期間を1日短縮し、肺炎、呼吸器疾患のリスクは減らすといわれていますが、健康な人なら飲まずに良くなる ことも多いです。
タミフルは、世界の70%が日本で消費されています。この傾向からも推測できるように、日本では、抗ウイルス薬が安易に使われすぎているのかもしれません。
安静、水分補給、クーリング、対症療法で経過を見てもよい場合もあると思います。
解熱剤は、アセトアミノフェン(カロナール コカール アンヒバ アルピニーなどの商品名)を使うのが安心です。ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)、ポンタール(メフェナム酸)、アスピリンなどの解熱鎮痛剤は、脳症を悪化させるリスクがあるといわれています。他の人に処方された解熱剤を、量を減らしたりして子どもに使用するのは危険です。
インフルエンザが流行すると、どこの医院も待合室はいっぱいになります。夜間救急外来も、発熱の子どもでいっぱいです。発熱しても、お子さんの状態が悪くなければ、夜受診せずに朝まで待った方が良い場合もあると思います。
日中の外来も、インフルエンザの流行期は、熱性けいれんが頻発したり、点滴などが必要な患者さんが多かったりするので、診察が予定通りには進まず、待ち時間が長くなってしまうことが多いかもしれません。あらかじめ、お詫びさせてください。お子さんの具合が悪くて<待てない状況>である場合には、遠慮せず、必ず御連絡下さいね。
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